2010年3月8日、いよいよ再生工事が始まりました。まずは母屋の床を水平に戻す工事から始まります。外側の建具を全部取り、縁側の支柱と床も外します。そして、床下の大梁にジャッキをかけて、沈んでいるところを持ち上げていく力仕事です。
この土地は、水はけも良く、すべてが切り土でできているようで、地盤的にはしっかりしているのですが、床は水平ではなく、色々なところが斜めに傾いています。柱は束石とよばれる石の上にただ乗せられているだけなので、石の下の地面が重量に負けて沈み込んでいくと、柱のレベルも下がります。つられて床も斜めになってしまって、なんだか不安定な状況になってしまっていました。それを直す為に下がっている箇所の構造体をグイッと持ち上げて、足りなくなった柱を継ぎ足していきます。
理想を言えば、家を1mくらい持ち上げて、コンクリートの基礎を造ってから、そこに母屋の構造体をのせて、基礎に接続する工事をすれば、今後、床が斜めになることは無くなるのですが、それはそれは大工事で、工事代もとても高くなるので、山のツバル再生工事では、その手法は初めから圏外です。
しかし、束石の上に柱をのせただけの工法は、実は耐震的にはとても有効な造りなのです。大きな横揺れにおそわれた時に、柱から上の構造体が束石の上を滑って、揺れを直接受けることを防いで、免震を行うことができるのです。この優れた特徴を残さない手はないですね。
土壁がないので軽く持ち上がるかと持っていましたが、屋根の瓦が重いようで、結局5トンもの圧力をかけて持ち上げた部分もありました。瓦もそうですが、なにしろ構造体がごついので重いはずです。そんな重い物を80年も支えてきたわけですから、地面も多少は沈みます。多少と言っても、一番沈んでいた部分は20cmも沈んでいました。
ちなみに、囲炉裏間脇にちょこっと建っていた物置小屋も柱と梁は昔の古民家の部材の再利用でできていて、大変立派です。クレーンで持ち上げてみると重さは約2トンありました。立派ですね。
床が水平に戻ったところで、次は、いよいよ柱の斜めを治す工事です。この工事がスムーズに進んでくれないと、工事金額がどんどん高くなってしまいます。素直に言うことを聞いてくれることを祈りつつ、工事の進捗を見守ります。