床の水平を取りながら、建物の傾きを直す工事が着々と進んでいます。斜めになっている建物を建て起こす工事としては、全部解体して組み立て直す!これは高いけど完璧です。もう少し簡単な方法としては、外部から油圧ジャッキなどで圧力をかけて、無理矢理起こす。この工事も外部に屈強な支点を設ける必要があるので、安い工事ではありません。山のツバルでは一番手軽な方法で建ておこしを試みました。建物の内部で柱と梁を引っ張って、歪みを補正していく方法です。この方法は、大規模な解体を必要とせずに行うことができるので、もしかしたら人が住んでいてもできる工事かもしれません。今回の工事は幸いなことにこの方法でかなりの歪みを直すことができました。柱が垂直に立っていると家そのものもしゃんとして見えるから不思議です。
寒い地域の屋根は瓦の下に土が敷き詰められているケースもありますが、この家の屋根の造りは、木の板や杉の皮などを敷き詰めた上に瓦が乗っかっているだけ。瓦の上を歩けば瓦がカタカタ鳴るし、一番古い瓦は、下手に乗ると割れてしまうかもしれないほど頼りない感じです。現代の住宅では屋根が壁に当たる隅とか、壁が立ち上がって屋根の下側に当たる部分などは、特に念入りに防水工事をしますが、この家の場合は、場所によっては拳が入るほどの大きなスキマが空いていたりします。しかし、これでも80年の台風などの暴風に耐えてきたのですから凄い技術ですね。
しかし、古民家につきものの雨漏りはやはりあります。母屋の北東の角、かなり無理な感じでトイレに改築していた部分の屋根からの雨漏りがまず目につきました。それから、囲炉裏の間の南側の雨漏り。囲炉裏間と米倉の間の柱が20cmも陥没していたために、屋根を支えている梁が落ち、屋根が変形して雨漏りに繋がっていました。このような不具合も直しつつ、工事は進んでいきます。
写真は北東側のトイレ部分の柱と梁を入れ替えた後の様子です。屋根には新しく防水シートも設置しています。建具を外された工事中の古民家は、柱しかない不思議な建物です。家を通して南側の山並みがよく見えます。ガラスの建具がなかった時代は、この柱の間に障子を入れただけの空間で生活していたのかと思うと、僕たちの今の暮らしぶりはとっても贅沢であることに気がつきます。
その生活に戻ることは難しいので、再生工事後は縁側にはガラスの建具、その外側には雨戸、そして障子を入れて、隙間風は多少あるかもしれませんが、快適に過ごせる家造りを目指しています。