古民家には、囲炉裏の煙で燻されたり、生活の様子が染みこんだりして、なんとも言えない良い風情の材が残っています。今回取り壊した米倉や、屋根の補修をするために落とした囲炉裏間の天井材からも良い表情の材が山のように出てきました。家の形になっている時は、そんなに沢山の木材を使っているようには見えませんが、壊してみて材の多さに驚かされます。
山のツバルの再生工事では、古い材で再利用できる物は極力再利用したいというコンセプトを、監理をしてくださっている西田さんにお伝えして、職人さん達の協力の下、工事を進めてもらっています。
写真のように現場には至るところにブルーシートで養生された山ができています。この内2つの山が解体工事から出てきた再利用可能な古材です。その他、どう頑張っても使用できない物は、薪として使うように短く刻んで写真の手前に積み上げてくれています。この作業は西田さんとその息子さん、そして数人の職人さんが根気強く処理してくださっています。西田さんは、古材の貴重さ、美しさを僕よりも理解してくださっている人です。本当にいい人に巡り会ったな〜と日々感謝です。
これは裏口の上がり框です。綺麗な木目ですね!この材は母屋に使われていた敷居の再利用です。80年以上前の敷居の溝を大工さんが丁寧にカンナで平らにして框に再生してくださった逸品です。西田さん曰く、一日かかっちゃったんですよ〜・・・工期は遅れがちなので、笑い事ではないのですが、半分嬉しそうに、半分つらそうな目をして嘆く西田さん!素敵です!!
古材利用も何か手伝えないかと申し出たところ、洗面所の壁に貼る囲炉裏間の天井に使われていた板材を、洗う作業なら僕たちでも出来そうだと言うことで、ペンキ塗りの後は、板材選びから仕事を進めました。
解体後に、使えそうな材を選んで丁寧に積み重ねてくださっていたのですが、まず、材の選別に沢山の手間と時間がかかったそうです。その後、板材は高圧洗浄してくださっていました。「新しい材料を買ってきた方が手間の面では全然簡単ですよ〜」ここでも西田さんの複雑な声が聞こえてきます。その努力を無駄にしないためにも、使える材を選んで、やすりで磨いて汚れを落として洗って、、、という作業を進めます。材によっては、釘が残ったままになっている板もあり、錆びてこびりついた釘を外すだけでも手間がかかります。
後ろに立てかけてあるのは、囲炉裏間の天井に使われていた杉板です。良い色が染みついていますね〜!この表情を壊さないようにススなどの汚れだけをヤスリでこすり落として、水洗いをします。ちなみにこのとき使ったヤスリはスポンジ状のヤスリ、目が詰まらずに材も痛めずに綺麗に汚れが落ちていきます。汚れを落として水洗いした時に浮き上がってくる木目と木味の素敵なこと!いやいや、こんな素敵な物を廃棄物にするわけにはいきません!
洗って乾燥中の板の列。見る人によっては廃材ですが、僕たちにとっては宝石です。どんな壁になるか、こちらも楽しみです。一部割れていたり、綺麗な整形ではない板もあったり、壁材としてはまったく不適切な板達なので、これからの施工も大変だと思うのですが・・・西田さん、大工さん、よろしくお願いします。