サイレージラップ

Photo credit: floodllama on VisualHunt.com / CC BY

 

牧草を長期保存するためのツールにサイレージ・ラップがあります。写真のように玉にした牧草をラッピングして、長期保存するのです。

南九州エリアではこの牧草玉を母牛の餌にして、子牛を産ませて半年ほど育ててから出荷する肥育が盛んです。この子牛が育てる場所や、育て方で、立派なブランド牛になるわけです。

ブランド牛を育てる農家は、相当気を使って丁寧に育てるわけですが、肥育農家は産ませて半年ほど育てれば良いだけなので、良い加減な仕事をする農家も多いのです。そのため、糞害(主に匂い)の苦情も役所には多く寄せられるようです。

山のツバル近隣にも肥育農家があります。野積みギリギリの糞尿処理を行っているので、梅雨時期など、風に乗って流れてくる糞尿の匂いは酷いもので、その農家の周辺はいつも下水処理場の中にいるかのような悪臭が充満しています。

その上、化学物質を燃燃やしたときにでる悪臭も毎晩のように漂ってくるのです。あるとき、早朝から夕方まで、この悪臭が絶え間なく流れてくる日があったので、一体、何を燃やしているのですか?と聞きに行ってみました。

その正体は、飼料袋や農薬の袋、そして、使用後のサイレージ・ラップ でした。環境汚染をしている当人は「燃やしても大丈夫だと書いてあるから燃やしている」とうそぶいていますが、、、

△使用済みラップの廃棄について

●本品は可燃性です。焼却する際は、空気を十分に送り込んで焼却すれば、二酸化炭素と水蒸気になります。

●破棄する場合は、お住いの自治体のルールに従って処分してください。

この書き方では、燃やしても大丈夫です。と読むこともできます。しかし、大原則として、このような農業資材は「産業廃棄物」に該当するため、個人が家や牛小屋の周囲で燃やすのは産業廃棄物法違反となります。しかも、落ち葉や枯れ草に混ぜ込んで、1日かけて不完全燃焼させ続けたりするのですから、有毒ガスも出て、立派な環境破壊です。

なんでこんな表記になっているのか?早速販売元のコメリに聞いてみました。

近くの販売店の担当者は「まさか産廃を家庭で燃やす人はいないはずなので、この注意書きは廃棄物処理業者向けに書かれているものだと思います。」ということでした。しかし、ラップを廃棄するときはこの箱に戻してから廃棄するわけではないので、処理業者がこの注意書きを読む機会はあり得ません。

「安い商品なので、ダイオキシン対策などは行っていない商品かもしれません」!?えっマジですか!という答えもありました。

曽於市役所の担当者は「ラップは燃やさずに、指定日に指定場所に廃棄物として出していただくようになっています。ラジオや回覧板などで情報提供をしています」「違反行為があることは知っていますが、それを警察に連絡したことはありません」とのこと。一次産業だけで成り立っている曽於市ですから、農家をあまり厳しく指導できない。という気配が電話口から感じれらます。

どのような回覧を回しているのか、PDFで送ってもらったところ、そこにも「ラップは産業廃棄物なので、適正に処理しないと罰則があります。」と書かれています。

燃やすとダイオキシンが出るのではないか?という話もあったので、販売元のコメリ本社にも問い合わせてみました。

女性の担当者は、「ラップは燃やしてはいけないものです。処理は自治体のルールに従ってください」という返答。ダイオキシンに関しては、1日調べた上で、「この商品は組成が違うので燃やしてもダイオキシンはでません」「表記に問題があるという指摘は、担当者に伝えて今後の参考にします。」との回答。その回答をFAXで送ってほしい、というリクエストには、「文章を発行することはできません。」の一点張りで対応をしてもらえませんでした。

コメリ、なかなかブラックな背景がありそうですね。

 

ラップの組成などは箱に記載がないので、詳細がわかりませんが、仮にPEだとした場合、化学式上ではポリエチレン(PE)は完全燃焼すれば二酸化炭素と水に分解される有機物となっています。しかし、完全燃焼させなければ、一酸化炭素は発生します。また、ラップの他にも飼料袋や農薬の袋なども、枯れ草に混ぜ込んで燃やしているので、ダイオキシンや塩化水素(HCl)などの有毒ガスが発生している可能性は否定できません。

 

ド田舎では、家畜の糞尿の臭いなどは「田舎の香水」などと行って誤魔化し、家庭ごみや産廃の野焼きなどは、みんなやっているからという感じで見て見ぬ振りをしてきた慣習があります。このような悪習を放置して、肥育業者に免税措置を施して保護し、鹿児島県子牛出荷件数日本一!とか言って喜んでいるのですから、おめでたいものです。

都会で暮らしている人たちが、環境保護のためにエコバックや水筒の使用、狭い家の中で色々工夫してごみの分別、など、工夫しているのに、守りたい緑や川がある田舎の農家は、環境には無頓着。この図式は早く是正して行きたいものです。

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