年明けから山のツバル二期工事をしています。木材の値上がりにつられて、色々な材料が軒並み値上げされていて、下げ戻る気配もないようです。困ったものです。
初回のリフォームの際にも外壁材には厚さ12mmの杉板材を使用しています。これを無塗装で放置しておくと、銀色といわれる渋い色合いに変わります。右側が12年経過した無塗装の杉板の壁面。左側は今回増築している部分です。製材したての杉板の色が見えています。
杉板は「一等材」というグレードの材を使っています。節がある材なので通常表側には使用しません。その代わり安いので(それでも10年前より値上がりしていますが。。。)今回も外壁として杉一等材を発注しました。しかし、12年前の一等材よりあきらかに節が多い!
節というのは、このような目が付いている感じに見える部分です。この節は生節(いきぶし)です。枝が生きている状態で幹に取り込まれた部分です。
こちらは死節(しにぶし)枯れた枝が幹に取り込まれて出来た節です。もともと枯れた枝なので、マイナスドライバーで突っつくだけで、ポロポロと欠け落ちてしまったり、指で押すだけで抜け落ちてしまったり、という感じで、放置すると外壁が穴だらけになってしまう困った節です。
最近、伐採される針葉樹は、下草刈、不要な枝を伐採する枝打ち、間伐などの基本的な手入れをせずに放置してきた山のものが増えてきているようで、死節が増える傾向にあるようです。
そこで、実験も含めて、山のツバルでは3種類の方法で死節の修復を試みています。
一番簡単で安くできるのは、耐水性のある木工パテでパテ埋めすることです。尖った金属で死節の中をこそぎ落としてから、パテを押し込んで表面を慣らしていくだけです。時間があれば、最後に紙やすりで仕上げると良い感じになります。
パテ補修の問題は色の経年変化が期待できないので、杉板が銀色になってもパテ部分だけ白っぽく残ってしまう点です。いつまでも死節が目立ち続ける事になります。
それが気になる場合や、節が落ちてしまって貫通穴が空いている部分(抜節)はパテ埋めではなく埋木で対処します。
一見、普通の節に見えますが、この節も死んでいます。節と周囲の板の間に黒い隙間ができているのがわかります。このような節は指で押し込むと、ポロッと抜けてしまいます。
埋木をするために、節より一回り大きく切り取ります。
径の大きいドリルで穴を開けて節ごと削り取ってしまう作業です。怖いのはドリルの刃をザクッと突っ込んでしまうと、内側にある防水シートに穴を開けてしまうことです。この作業は壁を貼る前にやっておけば簡単で早く出来ます。
穴に合わせて埋木を作り差し込みます。
この巨大な鉛筆削りは「節太郎」という商品です。インパクトドリルで削り機を回転させて、埋木を円錐形に削ります。
円錐状になった埋木に接着剤をつけて叩き込みます。あまり強く叩くと板が割れてしまうかもしれないので、力加減が必要です。
しばらくこの状態で放置します。
接着剤が乾いたところで、ノコで切り落として、紙やすりをかけて完成です。
一つの節に結構な時間がかかるので、抜節だけを処理するのが精一杯というところです。
最後に紹介する方法は、今回、初めて試みる薬剤です。
「木固めエースNEO」の商品説明を見ると、木の腐っている部分を硬化して掘削加工ができるようになる、と書いてあるので、死節を硬化させて固定できるのではないかと考えました。方法は簡単で、この透明な塗料を死節に塗るだけです。塗るというよりも、染み込ませていく感じです。
生きている部分はあまり吸い込みませんが、死節はスーッと吸収していきます。吸い込まなくなるまで筆で塗料をおいていきます。
こんな感じで飽和したらOKです。
丸一日するとガッチリ硬化してポロポロ落ちてきたり、欠けたりしなくなります。ただ、周囲の板材との間に隙間ができてしまっている抜節の場合は、節は硬化しますが、節と板材がこの塗料で接着されるわけではないので、埋木のほうが確実です。
この方法は早いし塗料もリーズナブルなのでオススメです。
埋木と同じように、壁を貼る前に処置すると楽にできます。それから、強力なシンナーなので、その点も注意が必要です。
硬化した節が数年後にどのような色になるのか?楽しみです。